日本通訳案内士団体連合会による国への要望 2021年12月1日

要望書の全文

令和3121

観光庁長官

和田 浩一様

日本通訳案内士団体連合会

会長 澄川雅弘

 

                      要望書

 

近年、長期に低迷する日本経済において、牽引的な役割を果たしてきたのが、国際観光(インバウンド)であります。令和2年の観光白書によれば、訪日外国人数は、3,188万人であり、訪日外国人旅行消費額は、48135億円であります。このインバウンドにおいて、不可欠な役割を果たしてきたのが、通訳案内士ですが、今日、新型コロナウイルス感染症の影響により、深刻な経済的な困窮にあえいでいます。

 例えば、観光庁の実施した令和2年度主要旅行業者の旅行取扱状況年度総計(令和2年4月分~令和3年3月分)によると、外国人旅行は、9,099百万円と、前年度226,101百万円と比較して、4.0%にまで、激減しました。

 

 現在、新型コロナウイルス感染症については、NHKの調べでは、1130日現在、ワクチンの2回接種した人の割合が、77.1%と、主要7ヶ国首脳会議に出席するすべての国で、最も高い水準となりました。それとともに全国の新規の陽性者数も1週間の1日平均が120人を下回るほどまで、低下しています。

このようななかで、国内旅行においては、復調が見られ、宿泊業、国内交通事業においては、業績改善の兆しが生まれています。

 

一方、新型コロナウイルス感染症のオミクロン株の登場に伴い、1130日より、政府は、世界のすべての国や地域を対象に、外国人の新規入国を原則停止しました。インバウンド専業である通訳案内士にとっては、まだまだ厳しい状況が続く可能性があります。

 

とはいえ、2022年には、訪日外国人の再開、増加が予想されます。今後、必ず到来することが予測されるポストコロナ、ウイズコロナの時代において、全国通訳案内士は、我が国のインバウンドにおいて、極めて重要な役割を果たすと考えられます。

 しかしながら、仕事の激減に伴い、多くの通訳案内士は通訳案内士以外の仕事に就労し、また、廃業した者も少なくない現状です。また、こうしたなかにあっても、インバウンドの再生に期待して、各種調査・外国語のリスニング訓練等各種研修の受講などにより、その力を蓄え、またスキルアップに取り組んでいる者もおります。ただ、経済的に困窮するなかで、こうした努力を続けることは、もはや個人の努力の限界を超えているとも言えます。

 

そこで、政府及び与党におかれましては、以下の支援策を実施するように、お願い申し上げます。

 

[要望事項]

 

第1.  通訳案内士業務が復活する迄の給付金支給

 

第2. 全国通訳案内士試験について

 

第3. 全国通訳案内士の学習機会の支援

 

第4. 観光事業者への支援

 

第1 通訳案内士業務が復活する迄の給付金支給について

要望事項1-1

(1) 通訳案内士業務が復活する迄の給付金支給

次の何れかの実現に向けた観光庁独自の予算化、若しくは経済産業省への働き掛けを行なって戴きたい。

・昨年度実施された持続化給付金のその後の困窮の実態を踏まえた、再度の支給

・今年度実施されている月次支援金の様な制度(通訳ガイドを対象者として明記すること)

・通訳案内士特別給付金

 

 (説明)

新型コロナウイルス感染症の問題に因るインバウンド途絶が長期化しており、昨年2月から今日に至る迄21箇月間通訳案内士業務は消滅したままである。観光客に関しては、此の先もいつ再開されるかの目途は立っておらず、最多の中国人訪日客に関しては、来年秋以降との観測も出ている。

日本国内における新型コロナウイルス感染症の患者数の減少に伴い、国内旅行の復活は見られるが、インバウンドの状況は、極めて厳しいものがある。

 

困窮を極めている通訳ガイドを是非共救って戴きたい。さもなければ、個々の生活を支える為に通訳ガイドの廃業・転職が進み、インバウンド再開時には誰も居なくなってしまっていると言う事態が懸念される。政府・行政からも必要とされていないとの誤解も進むおそれが有る。

 

 昨年度、実施された持続化給付金は、通訳ガイド全員を救済するものではなかったが、個人事業主を中心に一定程度効果が有った。今年度は継続されず、空白期間となってしまったが、再度の予算化を望む。

 

  今年度実施された月次支援金は緊急事態宣言等に対応するものであり、飲食業界を主な対象としたものであった為、多くの通訳ガイドは申請をして来なかった。今後も持続化給付金ではなく、月次支援金の形での支援が継続される場合は、インバウンド途絶に因る影響を受けて居る通訳ガイド等個人事業主を対象者として定めて戴きたい。

第2 全国通訳案内士試験について

要望事項2-1

(1) 受験機会の拡充

・全国通訳案内士の試験会場は、令和4年度には、1次試験において、仙台市、名古屋市、広島市を復活し、第2次試験においては、福岡市を復活させること。

1次試験の実施日を8月に戻すこと

 

(説明)

 令和3年度においては、第1次試験において、それまで試験会場であった仙台市、名古屋市、広島市での試験が実施されなかった。また、第2次試験では、それまで試験会場であった福岡市の会場での試験が実施されなかった。

 その結果、東北地方、中部地方、中国・四国地方などでは、多くの受験者が遠隔地での受験を余儀なくされ、受験しなかった者もいると聞く。

 通訳案内士の業務独占の廃止に合わせて、こうした受験機会の縮小は、受験者数の減少の一因ともなっている。

 

訪日外国人数と全国通訳案内士試験の受験者 (日本政府観光局資料から作成)

 

    年

西暦年

受験者数

合格者数

訪日外国人数

平成26

2014

7,290

1,658

13,413,467

平成27

2015

10,975

2,119

19,737,409

平成28

2016

11,307

2,404

24,039,700

平成29

2017

10,564

1,649

28,691,073

平成30

2018

7,651

753

31,191,856

令和元年

2019

7,244

618

31,882,049

令和2年

2020

5,078

489

4,115,828

令和3

2021

減少が予測される

                 

 ・令和3年度は、これまで8月に実施してきた全国通訳案内士の受験日を926日に変更した。

 

要望事項2-2

(2) デジタル化

全国通訳案内士試験のデジタル化を進めることにより、以下3点を推進してほしい。

・インバウンド受け入れ人材整備と拡充を推進するためにも、若い世代が受験しやすい制度整備を進める。

・受験機会や受験場所の増加を図ること。

・デジタル化に伴う見直しのなかで、試験問題の適正化を図る

  

(説明)

 我が国の語学系の検定、試験は、デジタル化が進んでおり、これに伴い若い人たちの受験者が増加している。全国通訳案内士試験もデジタル化を進め、受験機会の拡大を図る必要がある。

 

(3) 試験内容の適正化

① 難問や奇問を減らしてほしい。

② 問題の適正化をはかるため、一次試験の内容をチェックする試験委員に、経験豊富な通訳案内士をバランスよく指名することにより、十分なチェック体制を確立し、一部の受験者だけに有利になる問題や、内容に偏りがある問題等の出題を回避してほしい。

③ 上記②が困難であっても、試験後は、経験豊富な通訳案内士や学識経験者により、問題の振返りを実施し、翌年度の問題作成に反映してほしい。

④ 1次試験の合格点数を6割にしてほしい。

 

 

 

要望望事項2-3

 (説明) 

①~③について

1 受験者アンケート調査(出典:2020年全国通訳案内士筆記試験 受験者アンケート True Japan School & CEL英語ソリューションズ」)によれば、以下の声が寄せられている。 

 

質問3 難しかった又はとても難しかったと思った理由について、以下から選択してください。

①問題数が多すぎて考える時間が少なかった。                                  ②教科書や各種の参考書に記載されていない事項を問う問題が多かった。                        

③自分の勉強不足                                                                                                         

④合格点の設定が高すぎる。                                                                                

⑤質問事項が通訳案内士として必要とされている知識と思えない。

⑥新型コロナウイルス感染症のために、勉強時間が不足した。

 

 

2 全国通訳案内士試験ガイドラインにおいては、試験委員について、以下のように定めがあるが、

チェック機能の不足が懸念されている。

 

・試験委員は、筆記試験においては、試験問題の作成、答案の採点及び合否の判定に関する事務を行い、口述試験においては、試験問題の作成及び合否の判定に関する事務を行う。

試験問題の作成に当たっては、問題案を作成する試験委員と内容をチェックする試験委員を分けるなど、十分なチェック体制を確立し、一部の受験者だけに有利になる問題や、内容に偏りがある問題等の出題を回避する。

  

3 観光庁による全国通訳案内士試験のガイドライン(参考)

・総合旅行業務取扱管理者試験又は国内旅行業務取扱管理者試験に合格した者が全国通訳案内士試験を受験する場合は、日本地理についての筆記試験を免除する

大学入試センター試験の日本史Bについて60点以上を得た者(当該得点を得た試験の行われた日の属する年度又は当該年度の末日から起算して5年以内に実施される全国通訳案内士試験を受ける者に限る。)が全国通訳案内士試験を受験する場合は、日本歴史についての筆記試験を免除する。

 

上記のとおりガイドラインにおいては、「総合旅行業務取扱管理者試験」、「国内旅行業務取扱管理者」、「大学入試センター試験の日本史B」は、通訳案内士試験1次試験の日本地理又は日本歴史の免除科目となっている。これらの合格基準は、6割であり、問題内容も通訳案内士試験よりやさしい場合がほとんどである。

 したがって、現行の通訳案内士試験において、日本歴史、日本地理の合格基準を7割としている制度は、試験免除制度との間で、整合性を欠いている。

また、これらのあまりにも難しい社会科の科目のため、外国語の高いスキルを持つ若い日本人や外国人の通訳案内士試験離れが進んでいる。通訳案内士試験によるガイド水準の向上、外国人旅行者に対する安定したガイドサービスの提供という国策が、本試験制度の運用により、達成困難となっている。その結果として、ノンライセンスによるガイドの増大を招いている。

 

要望事項2-4   

(4) 公費負担

 (1)(3)の要望を実現するために、全国通訳案内士試験の運営は、受験料のみで運営するのでなく、デジタル化等による受験者数の増大や試験の効率化により、収支バランスが確保されるまでの当分の間は、国際観光旅客税その他の財源による公的な支援を行うこと。

このため、通訳案内士試験の意義や必要性、あり方などについて、政策立案者と、通訳案内士団体、旅行業者、有識者等を含んだ形での協議の場やヒアリングの場を設定してほしい。

 

(説明)

 新型コロナウイルス感染症により、安全な試験を実施するためには、試験の運営費が高騰した。また、新型コロナウイルス感染症によるインバウンドの低迷は、受験生の受験意欲の低迷を招いた。

 このような結果、アフターコロナ期におけるインバウンド復活期において、通訳案内士の不足が予想される。

 特に、言語系が全く異なる欧米系の外国人観光客には、通訳案内士が不可欠な存在である。また、大多数を占める中国語・韓国語系の訪日観光客に関しても、東アジアの地政学的な問題に鑑み、相互理解を深める交流が重要である。通訳案内士は、ソフト面のインフラであり、政府において、積極的な支援が期待される。

 すぐれた観光ガイドが必要とされるのは、通訳案内士という通訳案内士団体だけでこの要望をしているのではなく、旅行業者、訪日外国人にとって必要であることを踏まえ、制度の検討を進めてほしい。

 

 

第3 全国通訳案内士の学習機会の支援

要望事項

  新型コロナウイルス感染症による休止期間とその間の観光ニーズの変化に全国通訳案内士が対応できるように、通訳案内士団体が実施する研修について、以下の項目に対する助成制度を創設すること。

・講師謝金及び宿泊・交通費

・バス・会議室等の借り上げ費用

・学習用の動画作成費

・その他経費

 (説明)

 通訳案内士を取り巻く、近年の観光ニーズの変化としては、次のようなものがある。

① 富裕層対応

観光庁「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」においては、以下のようにガイド養成の必要性が報告されている。

・「富裕層の知的好奇心・探求心に応えられるような、幅広い分野で高い専門性を備えて説明できる人、本人が伝えられなくても翻訳して伝えていく人材が必要。」

・「5つ星ホテルができても、地域とつながりが薄く地域としてのサービスレベルが合わないということは実際起こっている。地域として取り組むことが大事だ。また、ガイド育成方法は変えていくべき。」

 ・「語学だけでなく、教養があり、相手の教養レベルを汲んで組み立てられるガイドが必要。多様な方を育てる仕組みが必要。」

・以上の状況を踏まえて、令和2年度、観光庁による「上質なインバウンド観光サービスを提供するガイド育成事業」が実施されたが、受講生の募集対象として、通訳案内士の資格が必要とされていないなど、選考基準が不明確であり、全国通訳案内士育成に対する国の姿勢に多くの通訳案内士から不満が寄せられている。

 ② アドベンチャーツーリズム及びSDGsなど

2018年、2019年のハイシーズンにおいて、人気観光地でオーバーツーリズムの弊害が発生した。

ポストコロナにおいては、三密を避け、郊外や地方での観光地に誘導することで、外国人観光客の集中を抑制していく必要がある。そのためには、各地域における通訳案内士の育成や、首都圏や近畿圏に集中している通訳案内士が地方でもガイドできるように、人材育成を進めていく必要がある。

③こうした状況への対応を個々の通訳案内士や団体に依存することには限界がある。とりわけ、2年もの長い間、極めて収入の少ない状況に置かれている通訳案内士個人や通訳案内士団体では、自己啓発や団体による研修の実施が困難である。

特に、以下の点について、国の支援が必要である。

・富裕層対応やアドベンチャーツーリズム、SDGsなどの新しいテーマでは、講師候補が少なく、著名な大学教授や建築家、実践家、外国人専門家を講師にせざるを得ない。講師謝金の水準が20万円を超える場合が多く、助成制度が必要である。

・バス及び会議室については、三密を避けるため、それぞれ定員の2分の1程度で実施している。

その結果、大型バスでも22名程度しか、研修を受講できない。また、40名の会議室として、240平方メートルものスペースを必要とする。こうした借り上げ施設に対する助成が必要である。

 

・遠隔地受講や在宅受講のために、動画制作の必要性が高まっている。画質が良く、見やすい動画制作は、専門家が必要であり、通訳案内士が購入しやすい金額とするには、助成が必要である。

そこで、政府及び与党におかれましては、以下の支援策を実施するように、お願い申し上げます。 

 

要望事項

第1.  通訳案内士業務が復活する迄の給付金支給

第2. 全国通訳案内士試験について

第3. 全国通訳案内士の学習機会の支援

第4. 観光事業者への支援

国への要望書日本通訳案内士団体連合会.pdf
PDFファイル 460.7 KB

第4 観光事業者への支援

  要望事項

観光庁の実施する「地域の観光人材のインバウンド対応能力の強化に向けた講師派遣業務」については、令和3年度は、令和2年度の予算額3億円に比べて、5千万円と大幅な予算額の縮小となった。

 宿泊、飲食、交通、小売等の観光事業者においては、令和元年、令和2年と外国人対応に精通した従業員が大幅に縮小している。そこで、以下の2点について、要望します。

① 令和4年のインバウンドの再拡大期において、再び必要となる観光事業者の事業員に対する人材育成の大幅なニーズに対応できるよう、事業規模の拡大を図ること

② 令和2年度の事業で受講できなかった通訳案内士に対し、講師養成講習会の受講機会の拡充を図ること。

 (説明)

 ①令和2年実施された本事業のテキストでは、以下のように紹介している。

「わが国においては、全国で2万人を超える全国通訳案内士が登録されています。全国通訳案内士は、外国語を用いて旅行に関する案内をするスペシャリストです。また、高い語学力とともに、訪日外国人旅行者に対して我が国の歴史、地理、文化などについて、正確にかつ直接伝えることができる人材として国家資格を得た者です。さらに、ベテランの全国通訳案内士は、多数の外国人に接する中で「民間大使」ともいえるスキルを身につけ、コミュニケーションやホスピタリティ、接遇能力などについても、多数の知識や高い見識を有しています。

 こうした全国通訳案内士が、外国人接遇の中で教訓的に得たものを宿泊事業者や地方自治体、DMOなどへの研修実施の中で広く共有することで、外国人旅行者を受け入れる方々の拡大を図ることが、本事業の目的です。」

 ②「地域の観光人材のインバウンド対応能力の強化に向けた講師派遣業務」については、全国で270回の事業を実施し、全国通訳案内士は、593回の就業機会を得た。「地域の観光人材のインバウンド対応能力の強化に向けた講師派遣業務のアンケート調査」によると、87.7%の人がその研修内容を高く評価している。

 ③講師養成講習会

令和2年度に実施した英語の講師養成講習会においては、受講者の応募者数が受講定員を超えているため、応募者3,094人からの事前審査書類内容を規程の選考基準に基づき、1,000人の受講合格者を決定した。

通訳案内士は、全国で約18000人が登録しており、再度の講習会実施を望む者が少なくない。

 派遣先からは中国語・韓国語の需要も高く、中国語や韓国語の講師養成講習会も合わせて実施してほしい。

 

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